臨床神経学

症例報告

抗GD1b抗体および抗GQ1b抗体の上昇をみとめ重篤な自律神経障害を合併したGuillain-Barré症候群の1例

井上 健, 郡山 達男, 池田 順子, 丸山 博文, 中村 重信

広島大学医学部第三内科〔〒734-8551 広島市南区霞1-2-3〕

症例は30歳の女性.明らかな先行感染症状はなく,口咽頭麻痺と共に手袋靴下型の感覚障害が出現し,急速に小脳性運動失調,ADH不適合分泌症候群(SIADH),消化管症状,排尿障害,起立性低血圧などが進行した.自律神経障害をともなったGuillain-Barré症候群と診断した.免疫吸着療法により運動・感覚機能と共に洞性頻脈,夜間心室性頻拍といった自律神経症状も改善した.抗ガングリオシド抗体はIgG抗GT1a,GQ1b抗体およびIgM抗GD1b,GQ1b抗体の上昇がみとめられた.抗GD1b抗体および抗GQ1b抗体のSIADHと小脳失調症および自律神経障害発症への関与が示唆された.

(臨床神経, 42:13−17, 2002)
key words:Guillain-Barré症候群, SIADH, 自律神経症状, 小脳失調症, 抗ガングリオシド抗体

(受付日:2001年5月28日)