臨床神経学

症例報告

難治性の情動障害に対しセロトニン系賦活剤が有効であった非ヘルペス性辺縁系脳炎の1例

成川 孝一, 長谷川 隆文, 武田 篤, 志賀 裕正, 糸山 泰人

東北大学大学院医学研究科神経科学講座神経内科学分野〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1〕

非ヘルペス性辺縁系脳炎による難治性のてんかん重積状態発症後約5カ月を経て,感情失禁,Klüver-Bucy症候群などの情動障害を呈した19歳女性を報告した.MRIでは両側前頭葉から側頭葉にびまん性の皮質萎縮および側脳室の拡大がみとめられた.情動障害はドパミン遮断薬やベンゾジアゼピン系薬剤には反応しなかったが,セロトニン再取り込み阻害剤および5-HT1A受容体アゴニスト投与により著明に改善された.器質性脳疾患にともなう情動障害は治療抵抗性であることが少なくないが,セロトニン系賦活剤が著効を示すばあいがあり,試みるべき治療法であると考えられた.

(臨床神経, 41:805−808, 2001)
key words:辺縁系脳炎, 情動障害, Klüver-Bucy症候群, セロトニン, SSRI

(受付日:2001年1月19日)