臨床神経学

症例報告

初期より高LDH血症がみられ1年間尿閉で経過後に亜急性痴呆を呈したintravascular malignant lymphomatosisの1例

山城 一雄1), 森 秀生1), 鈴木 明日香1), 森 清2), 濱野 慶朋3), 水野 美邦1)

1)順天堂大学医学部脳神経内科〔〒113-8421 文京区本郷2-1-1〕
2)順天堂大学医学部血液内科
3)順天堂大学医学部病理学第二

症例は71歳,男性.70歳時に体重減少に気づかれていたが,健診にて血清LDHの高値を指摘された.その2カ月後より腰痛,尿閉が出現し腰椎MRIなど検査を受けたが原因は不明であった.その約1年後より急速に進行する痴呆をきたし当科入院.腹部CTで両側の副腎の腫大をみとめ,副腎生検でlarge B cell lymphomaのintravascular malignant lymphomatosis(IVL)と診断,入院2カ月後呼吸状態の悪化により死亡.剖検にて全身臓器にIVLがみられ,大脳では後頭葉に層状壊死があり,仙髄では灰白質の壊死,白質での広汎な髄鞘の脱落がみられた.高LDH血症をともなう仙髄病変が考えられる例では,IVLをうたがって検査をくりかえすことが重要である.

(臨床神経, 41:786−791, 2001)
key words:血管内悪性リンパ腫, 仙髄症状, 副腎生検, 血球貪食症候群

(受付日:2001年8月3日)