臨床神経学

症例報告

シクロホスファミドパルス療法が奏効した橋本脳症の69歳男性例

松尾 欣哉1)2), 古賀 道明1), 本田 真也1), 神田 隆1)*

Corresponding author: 山口大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1丁目11〕
1)山口大学大学院医学系研究科神経内科学
2)現:山口県立総合医療センター神経内科

橋本脳症はステロイドが奏効する自己免疫性脳炎だが,近年ステロイド抵抗性で追加の免疫治療を要した報告が増えている.しかし追加の免疫治療には明確な方針が定まっていない.症例は3ヶ月の経過で認知機能が低下した69歳男性.頭部MRIでFLAIR高信号域が複数の血管領域に認めることから当初中枢神経血管炎を疑った.ステロイド治療に反応が乏しく,シクロホスファミド(cyclophosphamide; CPA)パルスを追加すると,速やかに認知機能は正常化しステロイド漸減後も再発はなかった.後日抗NAE抗体陽性が判明し橋本脳症と診断した.CPAパルスはステロイド抵抗性の橋本脳症に対する追加治療として有効な選択肢と考えられた.
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(臨床神経, 58:390−394, 2018)
key words:橋本脳症,シクロホスファミド,抗N末端αエノラーゼ抗体,ステロイド抵抗性

(受付日:2018年3月15日)