臨床神経学

症例報告

抗N-methyl D-aspartate(NMDA)受容体脳炎と類似した臨床像を呈したシェーグレン症候群関連辺縁系脳炎の1例

吉村 賢二1)*, 神吉 理枝1), 中野 智1)

Corresponding author: 大阪市立総合医療センター神経内科〔〒534-0021 大阪市都島区都島本通2-13-22〕
1)大阪市立総合医療センター神経内科

症例は妊娠37週5日の25歳女性,発熱後に異常言動,記憶障害が出現し,辺縁系脳炎と診断した.後に奇形腫ではないことが判明したが,帝王切開の術中に両側卵巣腫瘍を認めた.不穏,口部ジスキネジア,薬剤抵抗性の全身性ミオクローヌス,中枢性無呼吸,自律神経障害を呈したが,免疫治療に良好に反応した.経過から抗N-methyl D-aspartate(NMDA)受容体脳炎が疑われたが抗NMDA受容体抗体は陰性,一方,抗SS-A抗体が陽性であり,唾液腺生検でシェーグレン症候群(Sjögren's syndrome; SjS)と診断した.SjSに合併した辺縁系脳炎は過去に数例報告があるが,抗NMDA受容体脳炎様の経過を呈した報告はなく,辺縁系脳炎の鑑別を考える上で重要な1例と考え報告する.
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(臨床神経, 58:229−234, 2018)
key words:辺縁系脳炎,シェーグレン症候群,自己免疫性脳炎,抗N-methyl D-aspartate 受容体脳炎,妊婦

(受付日:2017年10月3日)