臨床神経学

症例報告

M蛋白血症を伴った悪性リンパ腫による馬尾症候群の1例

小西 宏史1)*, 田口 芳治1), 山本 真守1), 温井 孝昌1), 道具 伸浩1), 中辻 裕司1)

Corresponding author: 富山大学附属病院神経内科〔〒930-0194 富山県富山市杉谷2630〕
1)富山大学附属病院神経内科

症例は63歳男性.左臀部から左下肢のしびれ,下肢筋力低下,膀胱直腸障害などの馬尾症候群を発症し,亜急性に症状が進行し入院した.腰仙髄造影MRIにて馬尾下部領域に造影効果を認め,神経伝導検査では両側脛骨神経の導出が不良で,腓骨神経はF波潜時の延長を認めた.M蛋白血症を認め,多発性骨髄腫を疑ったが,血清可溶性IL-2受容体が4,490U/mlと著高で,FDG-PETにて椎体,馬尾の集積増加を認めた.L4椎弓根生検にてび漫性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断し,R-CHOP(rituximab, cyclophosphamide, hydroxydaunorubicin, oncovin, prednisone(prednisolone))療法を行い症状の改善が得られた.M蛋白血症を伴う馬尾症候群の場合,悪性リンパ腫の可能性も考慮すべきである.
Full Text of this Article in Japanese PDF (1524K)

(臨床神経, 58:223−228, 2018)
key words:び漫性大細胞型B細胞性リンパ腫,neurolymphomatosis,M蛋白血症,馬尾症候群

(受付日:2017年8月4日)