臨床神経学

短報

急性網膜壊死を合併しアシクロビル抵抗性を示した単純ヘルペス脳炎

小倉 玄睦1), 深江 治郎1), 木村 聡1), 青木 光希子2), 鍋島 一樹2), 坪井 義夫1)*

Corresponding author: 福岡大学医学部神経内科学教室〔〒814-0180 福岡県福岡市城南区七隈7-45-1〕
1)福岡大学医学部神経内科学教室
2)福岡大学病院病理学部

症例は55歳の男性.約3日の経過で発熱,意識障害,視力低下が出現した.神経学的に軽度の意識障害,両側の視力障害がみられ,頭部MRIのFLAIR像で高信号域が多発し,一部に造影剤による増強効果を認めた.脳生検の結果より単純ヘルペス2型脳炎および急性網膜壊死(acute retinal necrosis; ARN)の合併と診断した.アシクロビルとステロイド併用療法を施行したが,意識障害および視力障害はさらに悪化した.抗ウイルス薬をホスカルネットに変更し,意識障害および視力の改善を認めた.ARNはヘルペス髄膜脳炎後に発症するが,本症例のようにARNを合併したヘルペス脳炎は稀であり,難治性の場合はホスカルネットの投与を考慮する必要がある.
Full Text of this Article in Japanese PDF (580K)

(臨床神経, 57:230−233, 2017)
key words:単純ヘルペス脳炎,急性網膜壊死,単純ヘルペスウイルス2型,脳生検,ホスカルネット

(受付日:2016年9月21日)