臨床神経学

短報

開心術中の経食道心臓超音波検査により発症したTapia症候群の1例

藤原 悟1), 吉村 元1)*, 西矢 健太2), 大嶋 圭一3), 川本 未知1), 幸原 伸夫1)

Corresponding author: 神戸市立医療センター中央市民病院〔〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町2-1-1〕
1)神戸市立医療センター中央市民病院神経内科
2)神戸市立医療センター中央市民病院神経内科心臓血管外科
3)神戸市立医療センター中央市民病院神経内科麻酔科

症例は67歳男性.全身麻酔下での開心術後1日目の抜管直後より,嗄声,構音障害,舌の左側偏倚を認めた.頭部MRIでは原因病変を認めず,軟口蓋麻痺はなく,耳鼻科診察で左声帯不全麻痺を認めたため,Tapia症候群(反回神経麻痺と舌下神経麻痺の合併)と診断した.神経症状は緩徐に改善し,発症4ヶ月後にはほぼ完全に回復した.Tapia症候群は稀ではあるが,全身麻酔時の気管内挿管の合併症等として報告されている.本例では左口角から挿入していた経食道超音波のプローブが左咽頭後壁を圧迫したことが原因と考えられた.本例は術中の経食道心臓超音波検査によって生じたTapia症候群の初めての報告である.
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(臨床神経, 57:785−787, 2017)
key words:Tapia症候群,舌下神経麻痺,反回神経麻痺,経食道心臓超音波検査,圧迫性ニューロパチー

(受付日:2017年9月8日)