臨床神経学

症例報告

脳静脈洞血栓症の慢性期に発覚した硬膜動静脈瘻の1例

鈴木 由希子1)2)*, 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1)

Corresponding author: 大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2D3〕
1)済生会熊本病院脳卒中センター神経内科
2)大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室

症例は47歳女性.前頭部痛と右耳鳴に続いて左片麻痺が出現した.外傷歴や血栓性素因を含む基礎疾患はなかった.血管造影では上矢状静脈洞閉塞,右横静脈洞狭窄を認め,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法開始後,血栓は消退し,頭痛,耳鳴,左片麻痺も消失した.発症7ヶ月後に左耳鳴が出現した.血管造影では脳静脈洞血栓症は再発していなかったが,左後頭動脈から左横静脈洞〜S状静脈洞移行部に流入する硬膜動静脈瘻が確認された.左後頭動脈の用手的圧迫を開始し,以後耳鳴の増悪はなく,画像上も硬膜動静脈瘻の増悪や脳静脈洞血栓症の再発はなかった.脳静脈洞血栓症では慢性期に硬膜動静脈瘻が発覚することがあり,経過観察が必要である.
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(臨床神経, 56:612−616, 2016)
key words:脳静脈洞血栓症,硬膜動静脈瘻,脳梗塞

(受付日:2016年4月18日)