臨床神経学

短報

脊髄梗塞急性期のMRIの経時的変化:症例報告と文献的考察

竹下 翔1), 緒方 利安1), 米良 英和1), 津川 潤1), 深江 治郎1), 坪井 義夫1)*

Corresponding author: 福岡大学医学部神経内科学教室〔〒814-0180 福岡市城南区七隈7-45-1〕
1)福岡大学医学部神経内科学教室

症例は80歳女性.突然腰部から両下腿に激痛が出現し,約30分後に両下肢脱力,感覚低下,尿意消失を呈した.神経所見では完全対麻痺,第1腰髄髄節レベル以下の解離性感覚障害,膀胱直腸障害を認めた.第2病日の腰部MRIのT2強調画像及び拡散強調画像(diffusion weighted image; DWI)で,第1〜2腰椎椎体レベルの髄内に強い高信号域を認め,見かけの拡散係数(apparent diffusion coefficient; ADC)は低下しており脊髄梗塞と診断した.経時的にMRIを撮像し,DWIの信号強度は時間と共に減弱し,約1か月後のADC値は高値であった.T2強調画像で浮腫性変化は一旦増強したが,最終的には縮小した.本症例は脊髄梗塞のMRI画像変化を経時的に捉えた点で貴重な症例と思われた.
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(臨床神経, 56:352−355, 2016)
key words:脊髄梗塞,前脊髄動脈症候群,MRI,拡散強調画像,経時的変化

(受付日:2015年12月25日)