臨床神経学

症例報告

ネフローゼ症候群を合併した脳出血―症例の特徴と臨床的意義―

河野 龍平1)3), 岩城 寛尚1)4), 竹島 慎一1), 下江 豊1), 大田 慎三2), 栗山 勝1)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院脳神経内科
2)脳神経センター大田記念病院脳神経外科
3)現:勤医協中央病院救急センター
4)現:愛媛大学医学部附属病院薬物療法・神経内科

9年間の脳卒中11,161例から,血清アルブミン3.0 g/dl以下で,かつコレステロール250 mg/dl以上の症例は21例であった.うち高度の尿蛋白を呈するネフローゼ症候群は,16例であり,虚血性脳梗塞10例,脳静脈洞血栓症2例,脳出血4症で,脳出血は全脳卒中の0.036%,脳出血の0.18%であった.ネフローゼ症候群は,凝固亢進を起こす病態であるが,脳出血4症例は,血栓傾向に打ち勝つ脳出血危険因子を有した症例であった.ネフローゼ症候群の基礎疾患は糖尿病性腎症が3例,アミロイドーシス1例であった.ネフローゼ症候群は本来血栓形成傾向を示すが,脳出血を起こす症例が存在することを留意すべきである.
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(臨床神経, 56:180−185, 2016)
key words:脳出血,ネフローゼ症候群,糖尿病性腎症,血栓形成傾向,脳出血危険因子

(受付日:2015年10月20日)