臨床神経学

原著

SOD1遺伝子L106V変異家族性筋萎縮性側索硬化症における下部尿路機能障害の発現時期と排尿神経機構の病理所見

日根野 晃代1)2)*, 小蛛@清光3), 中村 昭則1)4), 下島 吉雄5), 吉田 邦広6), 池田 修一1)

Corresponding author:信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科〔〒390-8621 松本市旭3-1-1〕
1)信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科
2)諏訪赤十字病院神経内科
3)信州大学医学部神経難病学分子病理学部門
4)信州大学医学部附属病院難病診療センター
5)飯田市立病院脳神経内科
6)信州大学医学部神経難病学分子遺伝学部門

SOD1遺伝子L106V変異家族性筋萎縮性側索硬化症家系における下部尿路機能障害の発現時期および「排尿に関連する神経機構」各部位の病理学的所見を検討した.20例中10例で下部尿路機能障害を認め,5例が発症1年以内に発現した.人工呼吸器装着例では8例中6例が発現,うち3例は人工呼吸器装着とほぼ同時期であった.「排尿神経機構」では前頭葉,線条体,視床,視床下部,黒質,中脳水道灰白質,脊髄上行路,側索下行路,中間外側核,Onuf核が障害されていた.SOD1遺伝子L106V変異では発症1年前後と早期から下部尿路機能障害が発現し,蓄尿症状が多く,人工呼吸器使用とほぼ同時期に発現する症例がみられる.
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(臨床神経, 56:69−76, 2016)
key words:筋萎縮性側索硬化症,下部尿路機能障害,L106V,SOD1,神経病理

(受付日:2015年5月28日)