臨床神経学

症例報告

ミトコンドリア病と鑑別を要する臨床表現型を呈しCYP27A1遺伝子エクソン1に新規フレームシフト変異(c. 43_44delGG)を認めた脳腱黄色腫症の1例

高下 純平1), 林 信太郎1), 山口 浩雄1), 立石 貴久1), 村井 弘之1), 吉良 潤一1)*

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1〕
1)九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は37歳男性.23歳よりけいれん発作を繰り返した.35歳から難聴や歩行時のふらつきが出現し当科に入院した.近親婚の家族歴があった.低身長で,腱黄色腫はなかった.mini-mental state examinationは19点,感音性難聴,断綴性発語,嚥下障害,四肢の痙縮,小脳症状を認めた.血中と脳脊髄液中の乳酸とピルビン酸が増加していた.頭部MRIで小脳半球,脳幹,内包に対称性の病変を認めた.ミトコンドリア病を疑ったが,筋生検とミトコンドリアDNA遺伝子解析に異常なかった.血清コレスタノール高値,CYP27A1遺伝子の新規遺伝子変異(c. 43_44delGGのホモ接合体)を認め,脳腱黄色腫症と診断した.
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(臨床神経, 56:667−671, 2016)
key words:脳腱黄色腫症,ミトコンドリア,コレスタノール,CYP27A1,MERRF

(受付日:2015年9月30日)