臨床神経学

症例報告

ステロイド療法が著効した慢性髄膜炎の1例
―リウマチ性髄膜炎との鑑別の観点から―

森本 悟1)2)*, 尾 昌樹2)3), 櫻井 圭太4), 砂川 昌子5), 小宮 正6), 新井 冨生7), 金丸 和富1), 村山 繁雄1)2)

Corresponding author:(独)東京都健康長寿医療センター神経内科〔〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2〕
1)東京都健康長寿医療センター神経内科
2)東京都健康長寿医療センター神経病理(高齢者ブレインバンク)
3)埼玉医科大学国際医療センター神経内科,脳卒中内科
4)名古屋市立大学放射線医学分野
5)東京都健康長寿医療センター総合診療科
6)東京病院神経内科
7)東京都健康長寿医療センター病理診断科

症例は62歳の女性である.頭痛で発症し,3ヵ月にわたって進行する認知機能障害,発熱および炎症反応の持続を呈した.頭部MRI画像で皮質および白質に多発性病変をみとめ,造影後T1強調画像にて脳溝や脳室上衣に沿った造影効果をみとめた.認知機能障害およびMRI所見が急速に進行したため脳生検を施行.クモ膜下腔に多数の好中球浸潤および多核巨細胞よりなるリウマチ性髄膜炎類似の病理像をみとめるも,関節リウマチの症状はなかった.各種培養はすべて陰性で,抗菌薬,抗結核薬および抗真菌薬治療に反応なく,経口ステロイド療法が奏功した.2年後の現在も寛解を維持している.
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(臨床神経, 55:573−579, 2015)
key words:慢性髄膜炎,好中球,多核巨細胞,脳生検,ステロイド

(受付日:2015年2月11日)