臨床神経学

短報

発熱と陰部潰瘍の増悪時に脳梗塞をくりかえしたベーチェット病の1例

小池 佑佳1), 酒井 直子1), 梅田 能生1), 梅田 麻衣子1), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297番地1〕
1)長岡赤十字病院神経内科

症例はベーチェット病の30歳男性である.発熱と陰部潰瘍の出現後,一過性の右上下肢の脱力をきたし,頭部MRIで前大脳動脈領域の脳梗塞をみとめた.翌年,右被殻梗塞を発症し,その6日後に発熱と陰部潰瘍をみとめた.いずれも髄液IL-6(interleukin-6)値は上昇していた.頭部CTアンギオグラフィーで,脳梗塞の初発時には主幹動脈の病変はなかったが,再発時には右前大脳動脈の閉塞と左前大脳動脈の狭窄をみとめた.ベーチェット病患者の脳梗塞はまれだが,本例は発熱,陰部潰瘍,髄液IL-6値の上昇をともなって脳梗塞をくりかえした点が特徴で,ベーチェット病の増悪が血管炎の機序を介し,脳梗塞発症に関与したと考えられる貴重な症例である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (490K)

(臨床神経, 55:428−431, 2015)
key words:ベーチェット病,再発性脳梗塞,発熱,陰部潰瘍,髄液IL-6(interleukin-6)

(受付日:2014年11月14日)