臨床神経学

症例報告

抗グルタミン酸受容体(GluRε2)抗体が検出された非ヘルペス性急性辺縁系脳炎を合併した両側耳介軟骨炎の1例

西口 亮1), 藤本 武士2)*, 江口 勝美1), 福田 安雄3), 高橋 幸利4)

Corresponding author: 佐世保市立総合病院神経内科〔〒857-8511 長崎県佐世保市平瀬町9番地3〕
1)佐世保市立総合病院内科
2)佐世保市立総合病院神経内科
3)千住病院
4)静岡てんかん・神経医療センター

症例は62歳,男性.2012年6月初旬より両側耳介の疼痛や腫脹が出現し,1ヵ月半後に記憶障害が出現した.記銘力低下や失見当識をみとめ,頭部MRIでは両側側頭葉内側の異常信号と同部の腫脹を呈した.髄液検査で単形核球優位の細胞増多をみとめ,髄液での単純ヘルペスウィルスPCR陰性などから,非ヘルペス性急性辺縁系脳炎と考えられた.両側耳介病変より再発性多発軟骨炎がうたがわれ,ステロイド内服治療により両側耳介腫脹ならびに記銘力障害の改善をみとめた.本例では血清/髄液ともにGluN2B-NT2抗体(GluRε2抗体)が陽性であった.両者の合併機序として血管のみならずニューロンも標的とした自己免疫的機序も示唆された.
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(臨床神経, 55:395−400, 2015)
key words:非ヘルペス性急性辺縁系脳炎,再発性多発軟骨炎,耳介軟骨炎,抗グルタミン酸受容体抗体,GluN2B-NT2(GluRε2)

(受付日:2014年8月5日)