臨床神経学

症例報告

右動眼神経麻痺で初発し,後に対側の眼症状で診断に至った右海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の1例

横川 和樹1)*, 藤倉 舞1), 静川 裕彦1), 高橋 明2), 下濱 俊3)

Corresponding author: 札幌厚生病院神経内科〔〒060-0033 札幌市中央区北3条東8丁目5番地〕
1)札幌厚生病院神経内科
2)札幌白石記念病院脳神経外科
3)札幌医科大学神経内科

症例は85歳の女性.右眼瞼下垂と複視で当科に入院した.右動眼神経麻痺と右眼視力低下を認めた.確定診断に至らず,経口PSLを開始したが治療効果に乏しく症状は残存した.約10ヶ月後より左眼瞼下垂が出現し再入院した.入院中に左結膜充血,全方向性の左眼球運動障害が出現した.頭部MRAにて右海綿静脈洞の血流信号の増強を認め,血管造影で右海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻と診断した.左眼症状は海綿間静脈洞を介した対側海綿静脈洞の灌流圧上昇に由来すると考えられた.経静脈的塞栓術にて症状寛解を得た.原因の特定できない外眼筋麻痺を認めた場合,本症の可能性をふまえ積極的な画像的検索を考慮すべきと考えられた.
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(臨床神経, 55:828−832, 2015)
key words:硬膜動静脈瘻,海綿静脈洞,動眼神経,外眼筋麻痺,MRI

(受付日:2015年3月31日)