臨床神経学

短報

海外旅行を契機に発症した成人発症II型シトルリン血症の1例

山ア 正禎1)*, 島田 拓弥1), 濱岡 志麻2), 柴田 益成1), 内藤 寛1)

Corresponding author: 伊勢赤十字病院神経内科〔〒516-8512 三重県伊勢市船江1-471-2〕
1)伊勢赤十字病院神経内科
2)伊勢赤十字病院肝臓内科

症例は43歳の男性である.弟に痙攣重積で死亡の家族歴あり.3日間の海外旅行から帰った翌日から異常行動,意識障害が出現し,当科に入院した.高アンモニア血症と脳波で前頭部優位の左右差のない徐波の群発をみとめ,肝性脳症と考えた.分枝鎖アミノ酸製剤の輸液で症状は一時改善した.アミノ酸分析で血漿シトルリン高値をみとめ,遺伝子解析により成人発症II型シトルリン血症と確定診断した.食事療法と薬物療法で良好な状態を維持できるようになったが,増悪するばあいは唯一の根治療法である肝移植をおこなう予定である.本例は無意識に毎日摂取していたナッツを海外旅行で食べなかったことが発症の契機になった可能性がある.
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(臨床神経, 54:747−750, 2014)
key words:成人発症II型シトルリン血症,シトリン欠損症,シトルリン,高アンモニア血症,特異な嗜好

(受付日:2013年8月21日)