臨床神経学

症例報告

脳腫瘍と鑑別を要した中枢神経ゴム腫の1例

M内 朗子1), 阿部 剛典1), 仁平 敦子1), 溝渕 雅広1), 佐光 一也1)*, 伊東 民雄2)

Corresponding author: 中村記念病院神経内科〔〒060-8570 札幌市中央区南1 条西14丁目〕
1)中村記念病院神経内科
2)中村記念病院脳神経外科

症例は23歳の女性である.当初はMRI所見から脳腫瘍をうたがったが,血清,髄液とも梅毒反応陽性を示し,ベンジルペニシリンカリウム(PCG)の投与にて寛解したことから中枢神経ゴム腫と確定診断した1例を経験した.Treponema pallidumは感染早期から中枢浸潤することが知られており,本症例も感染から約6ヵ月で病変形成がみられた.しかし,本症例のように感染早期から症候を呈する頻度は低く,その中でも多くは髄膜炎であり,中枢神経ゴム腫はまれである.梅毒血清反応陽性患者に頭蓋内病変をみとめた際には中枢神経ゴム腫も鑑別に挙げ,精査する必要がある.
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(臨床神経, 54:738−742, 2014)
key words:神経梅毒,中枢神経ゴム腫,ベンジルペニシリンカリウム

(受付日:2013年12月17日)