臨床神経学

症例報告

ネフローゼ症候群に合併した脳静脈血栓症
―2症例の報告と文献レビュー―

岩城 寛尚1)2), 音成 秀一郎1), 原 直之1)3), 竹島 慎一1), 高松 和弘1), 栗山 勝1)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院脳神経内科
2)現:愛媛大学病態治療内科学
3)現:広島市民病院神経内科

ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome; NS)に併発した脳静脈血栓症(cerebral venous thrombosis; CVT)の2症例を報告する.両症例とも腎疾患,尿蛋白陽性の既往なく,入院後にNSと診断された.症例1は46歳男性である.大量飲酒後に発症.血液濃縮,アンチトロンビンIII低値,フィブリノーゲン(Fbg)高値をみとめた.症例2は89歳女性である.虚血性大腸炎による下痢が続いた後,皮質下出血をともない発症した.Fbg高値をみとめた.NSは血栓傾向を示し,静脈血栓も動脈血栓もおこりえる.文献的には,20歳以下ではCVTは脳動脈血栓合併の報告より10倍多く,成人は若年者より少ないが,静脈血栓に加え動脈血栓も多い.NSは血栓傾向を示すが,さらに引き金となる誘因が加わり発症する.
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(臨床神経, 54:495−501, 2014)
key words:脳静脈血栓症,ネフローゼ症候群,血栓傾向,アンチトロンビンIII,上矢状静脈洞血栓

(受付日:2013年9月22日)