臨床神経学

症例報告

脳梗塞の急性期治療中に心タンポナーデをきたした1例

永沢 光1)*, 小野 洋也1), 田中 英智1), 山川 達志1)

Corresponding author: 山形県立中央病院神経内科〔〒990-2292 山形市青柳1800〕
1)山形県立中央病院神経内科

症例は59歳男性である.肺癌で化学療法,放射線療法中であった.左下肢の脱力が突発し当科を受診した.MRIでは右前大脳動脈(anterior cerebral artery; ACA)領域に急性期梗塞巣が多発していたが,MRAにて右ACAの描出は良好だった.アスピリン,ヘパリンとエダラボンの投与をおこなった.4日目に呼吸苦が悪化し,胸部CTにて著明な心嚢液貯留をみとめた.心タンポナーデと診断して緊急心嚢ドレナージをおこない,呼吸状態は劇的に改善した.心嚢液は血性で組織診にて肺癌の心膜浸潤による心タンポナーデと診断した.6日目の3D-CTAにて右ACAに動脈解離の所見をみとめた.脳梗塞急性期治療のまれな合併症として心タンポナーデがおこりうることを認識する必要がある.
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(臨床神経, 54:218−222, 2014)
key words:脳梗塞,心タンポナーデ,抗血栓療法,脳動脈解離,悪性腫瘍

(受付日:2013年7月31日)