臨床神経学

原著

アルツハイマー病患者における時計描画の特徴
―量的および質的評価による検討―

小長谷 陽子1)*, 小長谷 正明2), 渡邉 智之1)3), 鷲見 幸彦4)

Corresponding author: 認知症介護研究・研修大府センター研究部〔〒474-0037 愛知県大府市半月町三丁目294番地〕
1)認知症介護研究・研修大府センター研究部
2)国立病院機構鈴鹿病院神経内科
3)愛知学院大学心身科学部
4)国立長寿医療研究センター神経内科

アルツハイマー病患者156人に対して時計描画テスト(clock drawing test; CDT)をおこなった.量的評価の総得点はMMSE(mini-mental state examination)総得点と有意な正の相関を示し,針に関する下位項目の正反応率は他の項目にくらべ低いものが多かった.Rouleauらの方法による質的評価のエラーでは「空間・計画障害」と「概念障害」の割合が高く,エラーのある群はない群にくらべ,MMSEおよびCDT総得点が有意に低かった.認知機能障害が重症になると質的エラーを示す人の割合は高くなった.CDTにより,認知機能障害の有無や全般的重症度だけでなく,概念障害,視空間認知障害,前頭葉機能障害などの個別の認知機能障害のいくつかを評価することができると考えられた.
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(臨床神経, 54:109−115, 2014)
key words:アルツハイマー病,時計描画テスト,量的評価,質的評価

(受付日:2013年1月21日)