臨床神経学

<Progress of the Year 2014 02-3> 多系統萎縮症― Update ―

多系統萎縮症の素因遺伝子

辻 省次1)

1)東京大学医学部附属病院神経内科ゲノム医学センター〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕

多系統萎縮症の多発家系に着目して,連鎖解析による候補遺伝子座の絞りこみ,全ゲノム配列解析による病因遺伝子の同定を進め,6家系中4家系で,COQ2遺伝子に病原性変異をみいだした.さらに,孤発性多系統萎縮患者,対照群において,COQ2の遺伝子配列解析を実施し,機能障害性COQ2が,MSA発症のリスクとなっていることをみいだした.コエンザイムQ10の機能としては,ミトコンドリアの電子伝達系における電子の運搬,細胞内で発生する様々な活性酸素種の除去にかかわっていることが知られており,COQ2変異は,ATP産生の低下や酸化的ストレスに対する脆弱性を増すことが病態機序として想定されている.
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(臨床神経, 54:969−971, 2014)
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(受付日:2014年5月22日)