臨床神経学

<Symposium 31-4> 神経変性疾患における神経炎症

筋萎縮性側索硬化症における神経炎症

遠藤 史人1), 山中 宏二1)

1)名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野〔〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町〕

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病巣では,グリア細胞の活性化やT細胞の浸潤がおこり,様々な炎症関連因子が放出されるが,このような現象は「神経炎症」と呼ばれ,ALS病態への積極的な関与が示されている.ミクログリアでは神経栄養因子のみならず種々の神経傷害性因子が産生され,アストロサイトではグルタミン酸のクリアランスが低下するなどの機能的変化が生じ神経変性に関与すると考えられる.さらに著者らは,ミクログリアとT細胞による神経保護性の炎症反応を制御する因子としてアストロサイト由来のTGF-β1の重要性をみいだした.ALSにおける神経炎症の病態機序の解明を通じ,グリア細胞やT細胞を標的とした新たな治療法の開発が期待される.
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(臨床神経, 54:1128−1131, 2014)
key words:筋萎縮性側索硬化症,神経炎症,アストロサイト,ミクログリア,T細胞

(受付日:2014年5月24日)