臨床神経学

短報

静脈血栓症を合併したMPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎の1例

斎藤 勉1), 藤盛 寿一1)*, 吉田 隼1), 金子 仁彦1), 小寺 隆雄2)

Corresponding author: 東北薬科大学病院神経内科〔〒983-8512 仙台市宮城野区福室1-12-1〕
1)東北薬科大学病院神経内科
2)東北薬科大学病院リウマチ科

症例は72歳女性である.67歳時に発熱,腎機能障害,MPO-ANCA陽性をみとめANCA関連血管炎と診断された.経過中,再発性中耳炎や鞍鼻をみとめ,限局型多発血管炎性肉芽腫症がうたがわれた.意識障害のため入院し,頭部MRIにて右大脳半球の硬膜に厚い造影増強効果をみとめ,MPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎と診断した.さらに右大脳半球に散在する静脈性浮腫と,静脈洞交会から右横静脈洞や直静脈洞にかけての狭窄をみとめ静脈血栓症と考えた.ステロイド,タクロリムス,抗凝固薬により改善をみとめた.MPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎にともない静脈血栓症をきたし意識障害にいたった既報告はなく,貴重と考え報告する.
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(臨床神経, 54:827−830, 2014)
key words:MPO-ANCA,肥厚性硬膜炎,静脈血栓症,多発血管炎性肉芽腫症

(受付日:2013年12月10日)