臨床神経学

短報

Periodic synchronous dischargeを呈しCreutzfeldt-Jakob病との鑑別を要した橋本脳症の1例

村松 倫子1), 濱野 忠則1)*, 白藤 法道1), 松永 晶子1), 井川 正道1), 米田 誠1)

Corresponding author: 福井大学医学部附属病院神経内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
1)福井大学医学部附属病院神経内科

症例は57歳男性である.精神発達遅滞を有する.1年4ヵ月前より性格変化が出現し,無言・無動症となった.痙攣重積状態となり入院した.脳波でperiodic synchronous dischargeをみとめ,脳MRI拡散強調画像で両前頭葉皮質・視床・右島に高信号域をみとめたため,孤発性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)がうたがわれた.しかし,甲状腺自己抗体および抗N末端α-enolase抗体が陽性であり,ステロイドにて臨床症状,脳波・MRI所見の明らかな改善をみとめたため橋本脳症と診断した.CJDをうたがう症例では,橋本脳症も必ず鑑別することが重要と考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (1729K)

(臨床神経, 53:716−720, 2013)
key words:橋本脳症,periodic synchronous discharge,Creutzfeldt-Jakob 病,抗N末端α-enolase抗体,ステロイド療法

(受付日:2012年9月26日)