臨床神経学

短報

筋炎が発症時より前景に立った全身性エリテマトーデスの1例

遠藤 芳徳1), 井川 正道1)*, 橋 直生2), 西野 一三3), 鈴木 重明4), 米田 誠1)

Corresponding author: 福井大学医学部附属病院神経内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
1)福井大学医学部附属病院神経内科
2)福井大学医学部附属病院腎臓内科
3)国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部
4)慶應義塾大学医学部神経内科

症例は42歳女性である.膠原病の既往なし.急激な両側大腿痛と四肢近位筋の筋力低下,CK高値にて入院した.抗核抗体などの自己抗体は陽性であったが,全身性エリテマトーデス(SLE)を示唆する症状に乏しく,蛋白尿・血尿も当初はミオグロビン尿による腎障害にともなうものと考えた.特発性筋炎と考え,ステロイド療法にて症状・CK値は改善したが,尿所見異常は持続した.腎生検にてループス腎炎がみとめられたため,SLEにともなう筋炎と診断し,タクロリムスの併用にて尿所見も改善した.筋炎が主体であっても,腎炎の合併や自己抗体陽性の症例では,SLEにともなう筋炎を念頭におくべきである.
Full Text of this Article in Japanese PDF (2307K)

(臨床神経, 53:634−637, 2013)
key words:筋炎,SLE,ループス腎炎,自己抗体,タクロリムス

(受付日:2012年10月10日)