臨床神経学

症例報告

進行する頸動脈病変をみとめた多腺性自己免疫症候群合併脳梗塞の1例

金澤 有華1), 松尾 龍2)*, 福嶌 由尚1), 福田 賢治1), 鴨打 正浩2), 北園 孝成2)

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院病態機能内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
1)聖マリア病院脳血管内科
2)九州大学大学院医学研究院病態機能内科

症例は40歳の男性である.2型糖尿病に対し,インスリン療法中であったが,コントロールは不良であった.左片麻痺を発症し,頭部MRIにて右中大脳動脈領域の新鮮脳梗塞と頸動脈エコーにて右内頸動脈の高度狭窄をみとめた.アテローム血栓性脳梗塞と診断し加療を開始したが,内頸動脈狭窄病変の進行と症状の増悪をみとめた.入院後の精査にて,1型糖尿病,バセドウ病,抗リン脂質抗体症候群を有する多腺性自己免疫症候群を合併した脳梗塞であることが明らかとなった.内頸動脈病変の進行には自己免疫反応の関与が考えられた.多腺性自己免疫症候群を合併した脳梗塞は過去に報告がない.また進行性脳梗塞の原因と考えられることから鑑別が必要である.
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(臨床神経, 53:531−535, 2013)
key words:若年性脳梗塞,多腺性自己免疫症候群,頸動脈狭窄,バセドウ病,糖尿病

(受付日:2012年11月21日)