臨床神経学

症例報告

多発性硬化症様の脳病変をくりかえし,NMDA受容体脳炎を呈した1例

山本 真也1), 国分 則人1), 渡邉 由佳1)*, 岡部 龍太1), 中村 利生2), 平田 幸一1)

Corresponding author: 獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
1)獨協医科大学神経内科
2)リハビリテーション天草病院脳神経内科

症例は31歳女性である.27歳時に左上下肢のしびれが出現し,MRIで脳幹に多発するT2高信号病変をみとめた.その後右動眼神経麻痺をきたし,多発性硬化症と暫定診断した.31歳時に,頭痛,発熱,精神症状後に意識障害と口舌ジスキネジアが出現,ステロイド療法により約3ヵ月で改善した.脳脊髄液の抗NMDA受容体抗体陽性からNMDA受容体脳炎と診断した.腫瘍の合併はなかった.その後も神経症状と脳病変の再発をくりかえした.抗AQP4抗体は陰性で,抗核抗体が陽性であった.抗NMDA受容体抗体が本症例の症状,脳病変に対しどの程度関与するかは明らかではない.NMDA受容体脳炎は多彩な臨床像をふくむ疾患単位である可能性がある.
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(臨床神経, 53:345−350, 2013)
key words:多発性硬化症,NMDA受容体脳炎,視神経脊髄炎,脳幹,抗核抗体

(受付日:2011年9月1日)