臨床神経学

<ホットトピックス(3)―1>

骨パジェット病および前頭側頭型痴呆をともなう封入体ミオパチー(IBMPFD)

林 由起子1)

1)東京医科大学神経生理学講座〔〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1〕

骨パジェット病および前頭側頭型痴呆をともなう封入体ミオパチー(inclusion body myopathy with Paget's disease of bone and frontotemporal dementia; IBMPFD)は,40歳頃に発症し,骨格筋,骨,中枢および末梢神経障害を示す疾患である.常染色体優性の遺伝形式をとり,VCP遺伝子の変異による.筋力低下はほとんどの患者にみとめられる.筋病理学的には筋原線維性ミオパチーの範疇に入るが,これに神経原性の変化がみとめられるばあい,本疾患をうたがう.骨病変は欧米に比し,その頻度は少ない.前頭側頭型痴呆は約1/3の例でみとめられ,自験例では認知機能の低下の他,運動ニューロン障害や小脳症状など多彩な神経症状がみとめられた.IBMPFD は本邦でもまれな疾患ではなく,多系統の障害をみとめるばあい,本疾患を考慮する必要がある.慎重な家族歴の聴取も不可欠である.
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(臨床神経, 53:947−950, 2013)
key words:VCP,tubulofilamentous inclusion,縁取り空胞,筋原線維性ミオパチー,神経原性変化

(受付日:2013年5月31日)