臨床神経学

<シンポジウム(4)―13―6>日本神経学会編纂診療ガイドラインの現況と将来展望

日本神経学会編纂診療ガイドラインの評価と将来展望

山本 光利1)

1)高松神経内科クリニック〔〒760-0027 香川県高松市紺屋町4-10 鹿島紺屋町ビル1階〕

2011年版パーキンソン病診療ガイドラインが刊行された.診療ガイドラインは計画,作製,実践,結果の評価の順に進行していき,評価の結果を踏まえて,改訂にいたる手順をくりかえすことになる.ここで一番大切なのは診療ガイドラインの実践結果の評価である.しかし,この評価は現実には困難である.そこで著者は全国各地(各地方に分散している)の10名のパーキンソン病専門診療の経験深い神経内科医に,彼らのところを初診した,パーキンソン病治療上問題があった症例を提出してもらった.これらの問題症例はいずれも診療ガイドラインを逸脱しており,かつ,治療自体も問題だといえる症例であった.臨床現場ではガイドラインの目指すことから逸脱した不適切な治療が全国各地でおこなわれている実態の一端が明らかになった.ガイドラインは絶対的なものではないが,その指針は合理性を有するものである.にもかかわらず,そのことが十分理解されていないか,自己流の診療をしているのかは不明確である.以上の現実からいえることはガイドラインをもっと神経内科専門医に対して周知させなければならないということであろう.これこそが喫緊の課題であり,いくらガイドラインを改定しても意味がないといえよう.
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(臨床神経, 53:1352−1353, 2013)
key words:診療ガイドライン,パーキンソン病,コンプライアンス

(受付日:2013年6月1日)