臨床神経学

<シンポジウム(4)―7―3>不随意運動の病態生理

振戦の病態生理

花島 律子1)

1)東京大学附属病院神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕

振戦とは律動的な筋活動を示す不随意運動である.そのリズム発生機序は,脳に発生源がある中枢性と,筋肉や感覚入力が関与する末梢性に分けられる.末梢性には,四肢にかかる重力や心臓の拍動などの物理的な要因と,末梢―中枢間の反射回路がかかわるものがある.末梢性と中枢性の鑑別法の一つには,荷重により振戦の周波数が変化するかみる方法がある.変化すると感覚入力が関与する末梢性が示唆され,変化しないと中枢性と推察される.中枢性の機序は,よくわかっていないが,振戦の周波数などから,小脳振戦やHolmes振戦,パーキンソン病の振戦など原因病変部位が推察されることが多い.その病変部位にリズム発生のペースメーカーが存在するという可能性の他に,その部位をふくむ中枢神経内ネットワークの機能によりリズムが作られる可能性がある.近年では,本態性振戦の発生に小脳オリーブ核の関与が注目されている.
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(臨床神経, 53:1276−1278, 2013)
key words:リズム,周波数,末梢性振戦,中枢性振戦,神経ループ

(受付日:2013年6月1日)