臨床神経学

<シンポジウム(3)―9―4>感覚障害を伴う近位筋優位型神経原性筋萎縮症(HMSN-P):疾患確立の歴史と分子病態

琉球型筋萎縮症(HMSN-P)の病因遺伝子

石浦 浩之1), 辻 省次1)

1)東京大学神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7丁目3-1〕

近位筋優位運動感覚ニューロパチー(hereditary motor and sensory neuropathy with proximal dominant involvement; HMSN-P)は常染色体優性遺伝の,成人発症で緩徐進行性の近位筋優位の筋力低下,筋萎縮を主徴とする神経変性疾患である.連鎖解析の結果,第3番染色体の31Mbにわたって,LODスコアが4を超える領域をみいだし,さらにハプロタイプ解析をおこなうことで候補領域内に3.3Mbの創始者ハプロタイプをみいだし,これを最少候補領域と考えた.エクソーム解析の結果,TRK-fused gene(TFG)のc.854C>T, p.Pro285Leuをみいだした.本変異は4家系の発症者全員でみとめられ,日本人対照者に存在しないこと,各種データベースに存在しないこと,ハプロタイプ解析から2つの独立した創始者が想定されたことより,TFGがHMSN-Pの原因遺伝子であると結論した.
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(臨床神経, 53:1203−1205, 2013)
key words:近位筋優位運動感覚ニューロパチー,HMSN-P,エクソーム解析,ハプロタイプ解析,TRK-fused gene(TFG)

(受付日:2013年5月31日)