臨床神経学

<シンポジウム(3)―8―4>中枢神経系感染症の遺伝子診断の進歩

トキソプラズマ脳炎のPCR検査法

浅井 隆志1)

1)慶應義塾大学医学部感染症学教室〔〒160-8582 東京都新宿区信濃町35予防医学校舎〕

トキソプラズマ脳炎の検査法には,髄液中のトキソプラズマ原虫をPCR法で検出する方法がもちいられる.その理由は,抗体価の検出法だけでは無症状の慢性感染者と脳炎患者との区別が難しいこと,ならびに免疫不全患者では抗体価の上昇が望めないためである.PCRの標的遺伝子としては1虫体あたり35コピーあるB1と110コピーある18S-rDNAがもちいられる.両遺伝子のNested-PCRをおこなったところ,18S-rDNAがもっとも感度の良い方法であった.しかしトキソプラズマ脳炎患者での陽性率は40%ほどで,炎症部位が髄腔と接触する患者で陽性率が高かった.このことは髄液中の虫体の有無が結果に反映された可能性が考えられる.
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(臨床神経, 53:1194−1195, 2013)
key words:トキソプラズマ脳炎,18S-rDNAネステッドPCR,LAMP法

(受付日:2013年5月31日)