臨床神経学

<シンポジウム(3)―3―4>脳梗塞急性期治療の最前線

脳保護療法の現状と将来展望

北川 一夫1)

1)大阪大学大学院神経内科学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕

脳梗塞急性期治療薬として確立されたエビデンスを有するのは血栓溶解療法だけで,グルタミン受容体拮抗薬,フリーラジカル捕捉薬,神経系栄養因子など多くの薬剤は基礎実験では有効性が証明されながら,国際的な臨床試験で効果が証明されるにいたっていない.しかし近年,グルタミン酸受容体サブタイプの脳虚血における役割が明らかになりそれに基づいた治療薬剤や虚血耐性現象をはじめとした内在性防御機構を活用する治療手段の開発が進められている.脳保護薬の開発には,薬剤の特性,病態生理的特徴を踏まえるとともに,臨床試験では薬剤の有効性を証明できるような試験デザインの工夫が求められる.
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(臨床神経, 53:1169−1171, 2013)
key words:組織プラスミノーゲンアクティベータ,側副血行発達,低体温療法,グルタミン酸受容体,遠隔虚血コンディショニング

(受付日:2013年5月31日)