臨床神経学

短報

診断に磁化率強調画像が有用で,メフロキン投与にて改善をみとめなかった悪性リンパ腫合併進行性多巣性白質脳症の1例

森本 彩1)2), 上野 弘貴2)*, 藤井 裕樹2), 中村 毅2), 中道 一生3), 西條 政幸3), 雪竹 基弘4), 松本 昌泰2)

Corresponding author: 広島大学病院脳神経内科〔〒734-8551 広島市南区霞1-2-3〕
1)広島大学病院卒後臨床研修センター
2)広島大学病院脳神経内科
3)国立感染症研究所ウイルス第一部
4)佐賀大学医学部内科学(神経内科)

症例は57歳女性である.特発性器質化肺炎に対して免疫抑制薬を内服中に高次脳機能障害などで亜急性に発症した.造影されない白質病変をみとめ,磁化率強調画像では病巣内に静脈の信号がみられなかった.FDG-PETで脳病変への集積はなく,肺多発病変に高度に集積していた.肺病変は生検にて,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された.脳脊髄液JCウイルスDNAが陽性で,脳病変は進行性多巣性白質脳症(PML)と診断した.メフロキンの反応性に乏しく,その後肺病変増悪による呼吸障害のため化学療法を施行せざるをえなかった.非HIV関連PMLに対するメフロキンの効果については今後更なる症例での検討が必要である.
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(臨床神経, 53:843−847, 2013)
key words:進行性多巣性白質脳症,悪性リンパ腫,磁化率強調画像,メフロキン,JCウイルス

(受付日:2013年3月18日)