臨床神経学

症例報告

SLEを背景とし,病態に抗グルタミン酸受容体抗体の関与が示唆された自己免疫疾患関連性辺縁系脳炎の1例

山口 佳剛1)*, 和田 学1), 栗田 啓司1), 高橋 幸利2), 加藤 丈夫1)

Corresponding author: 山形大学医学部内科学第三講座〔〒990―9585 山形県山形市飯田西2丁目2―2〕
1)山形大学医学部内科学第三講座
2)国立静岡てんかん・神経医療センター小児科

症例は23歳女性である.発熱・頭痛・多形紅斑の後に全身性間代性痙攣が出現し,頭部MRIで左側頭葉内側と左視床枕に病変をみとめた.失見当識,健忘症状があり抗核抗体などの自己抗体をみとめ,自己免疫疾患を背景とした辺縁系脳炎をうたがいステロイドで治療した.その後SLEの診断にいたり,SLEに関連した自己免疫疾患関連性辺縁系脳炎と診断した.本例では血清・脳脊髄液の抗グルタミン酸受容体(GluR)抗体(抗GluRε2抗体,抗GluRζ1抗体,抗GluRδ2抗体)をみとめ,脳炎回復期に抗体価は低下した.SLEにともなう辺縁系脳炎の一部は病態に抗GluR抗体が関与し,抗GluR抗体測定が辺縁系脳炎の診断と治療に寄与することが考えられる.
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(臨床神経, 52:545−550, 2012)
key words:自己免疫疾患関連性辺縁系脳炎,全身性エリテマトーデス,非ヘルペス性辺縁系脳炎,抗グルタミン酸受容体抗体

(受付日:2011年10月27日)