臨床神経学

原著

多系統萎縮症における眼球運動障害
―50例における経時的検討―

磯崎 英治1)*, 飛澤 晋介1), 内藤 理恵2), 水谷 俊雄3), 松原 四郎1)*

Corresponding author: 東京都立神経病院脳神経内科〔〒183―0042 府中市武蔵台2―6―1〕
1)東京都立神経病院脳神経内科
2)同 神経耳科
3)東京都立府中療育センター

多系統萎縮症における眼球運動障害の特徴を明らかにするため,50例を対象に9種類の眼運動系パラメーターの経時的変化を検討した.各パラメーターにおける異常出現率は,いずれも病型間(小脳失調先行型とパーキンソニズム先行型)で有意差をみとめなかった.また,経時的変化からパラメーターは3群―病初期から異常出現率が高頻度にみとめられる群,経過とともに徐々に高率化する群,進行しても比較的低値にとどまる群―に大別された.各群のそれぞれの代表として,頭位変換性眼振,視性抑制反応および温度眼振に注目し,これらの機能解剖学的検討から,病変は小脳の背側虫部次いで片葉,そして前庭神経核から前庭皮質にもおよぶと考えた.
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(臨床神経, 52:218−226, 2012)
key words:多系統萎縮症,眼球運動障害,下眼瞼向き眼振,温度眼振,前庭皮質

(受付日:2011年9月7日)