臨床神経学

症例報告

経過中,相貌失認を生じた脳脊髄液漏の1例

中野 正子, 梅原 藤雄,

Corresponding author: 公益社団法人鹿児島共済会南風病院神経内科〔〒892―8512 鹿児島市長田町14番3号〕
公益社団法人鹿児島共済会南風病院神経内科

症例は40代女性である.2週間前から立位で増強する頭痛が出現した.頭部MRIで硬膜の全周性造影効果をみとめ,RI脳槽造影で腰椎レベルから髄液漏出をみとめたことから脳脊髄液漏と診断した.入院後,顔をみても誰かわからないという訴えがあった.Cambridge face memory test で正答率が著明に低下しており,相貌失認と判断した.頭部MRIで紡錘状回下面をふくむ多発性硬膜下血腫,SPECTで大脳全体,紡錘状回をふくむ側頭葉内側部での血流低下をみとめた.輸液・燐酸コデイン内服・止血剤で経過をみたところ,頭痛・相貌失認は軽快した.本例では,右紡錘状回をふくむ側頭葉―後頭葉移行部付近が相貌失認の病巣である可能性が示唆された.
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(臨床神経, 52:96−101, 2012)
key words:脳脊髄液漏,相貌失認,cambridge face memory test,紡錘状回,硬膜下血腫

(受付日:2011年7月16日)