臨床神経学

楢林賞

ハンチントン病の分子病態解明

岡澤 均1)*

Corresponding author: 東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野〔〒113―8510 東京都文京区湯島1―5―45〕
東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野

ハンチントン病ではハンチンチン遺伝子のCAG リピート伸長により,変異RNA と変異タンパクが産生され,神経細胞の機能障害と最終的な細胞死を誘発する.私たちは20 年近く,網羅的アプローチ(オミックス)をもちいてハンチントン病ならびに関連するポリグルタミン病の分子病態を解析してきた.その結果,PQBP1,Ku70,HMGB,Maxer,Omi などの新たな病態関連分子を同定し,転写,スプライシング,DNA 損傷修復という核機能に深くかかわる新たな分子病態が存在することを,機能変化の面から明らかにしてきた.今後,これらのターゲット分子を介した分子標的治療の開発が期待できる.
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(臨床神経, 52:63−72, 2012)
key words:ハンチントン病,ハンチンチン,DNA損傷修復,オミックス,ポリグルタミン

(受付日:2011年10月6日)