臨床神経学

<シンポジウム(3)―9―4>重症筋無力症の新たな病態と疾患概念

心筋・骨格筋を標的とした重症筋無力症の新たな疾患概念

鈴木 重明

慶應義塾大学医学部神経内科〔〒160―8582 東京都新宿区信濃町35番地〕

重症筋無力症(MG)では筋炎・心筋炎が発症することが散発的に報告されてきた.われわれの検討によると924例の臨床経過中に心筋炎・筋炎を発症したのは8症例(0.8%)であり,球症状をともなう中等症から重症のMGであった.心筋炎は3例で,筋炎は6例でみとめられ,抗横紋筋抗体出現が特徴的であり,疾患マーカーとしての有用性が示唆された.心筋炎の症例では抗横紋筋抗体の1つ,抗Kv1.4抗体がしばしば陽性であり,治療可能な致死的な病態でありその発症には充分な注意を要する.MGにおいて筋炎・心筋炎は筋力低下の増悪や突然死の原因となり,心筋あるいは骨格筋も自己免疫の標的となることが示唆された.
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(臨床神経, 52:1312−1314, 2012)
key words:重症筋無力症,筋炎,心筋炎,抗横紋筋抗体

(受付日:2012年5月25日)