臨床神経学

症例報告

無菌性髄膜炎様の症状で発症し,Protein S欠乏症による脳静脈血栓症と判明した1例

石川 英洋1), 牧 俊樹1), 大達 清美1), 川田 憲一1)*, 冨本 秀和2)

Corresponding author: 松阪中央総合病院・神経内科〔〒515―8566 松阪市川井町字小望102〕
1)松阪中央総合病院・神経内科
2)三重大学大学院医学系研究科・神経病態内科学

症例は28歳男性である.頸部痛についで発熱,頭痛をきたして受診した.意識は清明で,項部硬直以外には神経学的に異常をみとめなかった.髄液検査では単核球優位の細胞増加をみとめ,無菌性髄膜炎の診断で入院した.入院4日目に左頭頂葉に広範な脳出血が出現し,開頭血腫除去術が施行された.術中所見と脳血管撮影,後方視的な画像評価から脳静脈血栓症と診断した.Protein S活性の低下をみとめたため遺伝子検査を施行したところ,Protein S遺伝子変異がみとめられ,Protein S欠乏症による静脈洞血栓症と診断した.初発症状が無菌性髄膜炎様であっても,脳静脈血栓症の可能性があることに留意が必要と考える.
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(臨床神経, 52:762−768, 2012)
key words:脳静脈血栓症,無菌性髄膜炎,髄液,Protein S,Protein S Tokushima

(受付日:2012年3月21日)