臨床神経学

症例報告

Fisher症候群と咽頭・頸部・上腕型Guillain-Barré症候群のオーバーラップ症例と考えられた1例

篠田 紘司1)2)*, 村井 弘之1), 柴田 憲一1), 鮫島 祥子1), 金藤 秀治1), 高嶋 伸幹1), 田中 公裕1)

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812―8582 福岡県福岡市東区馬出3―1―1〕
1)飯塚病院神経内科
2)九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は29歳女性である.先行する上気道炎の後,複視で発症し,鼻声,歩行時ふらつきが出現した.両側外眼筋麻痺,四肢体幹失調,四肢腱反射消失の他,両側顔面神経麻痺,構音障害,嚥下障害,頸部・上肢帯筋力低下をみとめた.Fisher症候群と咽頭・頸部・上腕型Guillain-Barré症候群のオーバーラップ症例と診断し,免疫グロブリン大量静注療法をおこなうも,頸部・上肢筋力低下と顔面神経麻痺は改善せず,ステロイドパルス療法をおこなった.本例では抗GT1a抗体と抗GQ1b抗体が共存したが,これらの抗体の種類により治療反応性,回復のスピードがことなる可能性が示唆された貴重な症例と考えられた.
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(臨床神経, 52:30−33, 2012)
key words:咽頭・頸部・上腕型Guillain-Barré症候群,Fisher症候群,抗GQ1b抗体,抗GT1a抗体

(受付日:2011年7月23日)