臨床神経学

症例報告

梅毒性視神経炎に合併したCharles Bonnet症候群の1例

緒方 英紀, 重藤 寛史, 鳥居 孝子, 河村 信利, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812―8582 福岡市東区馬出3―1―1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は62歳男性である.数カ月間で両側視力障害が急速に進行.視力は右0.03,左光覚弁.両側視神経萎縮,両下肢で腱反射低下と振動覚低下をみとめた.血清と髄液の梅毒抗体価が高値であり,梅毒性視神経炎としてpenicillin G を投与したが視力の回復はなかった.経過中,明瞭で複雑な幻視が出現.認知機能は正常で他の幻覚や妄想はみとめずCharles Bonnet 症候群と診断した.頭部MRIでびまん性大脳萎縮および斑状の白質病変,脳血流SPECTで右側優位に後頭葉内側の血流低下をみとめた.オランザピン投与にて幻視の出現頻度は減少した.本症候群の病態への後頭葉機能低下の関与を示唆する貴重な症例と考えた.
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(臨床神経, 51:595−598, 2011)
key words:梅毒性視神経炎,Charles Bonnet症候群,後頭葉,オランザピン,SPECT

(受付日:2011年4月12日)