臨床神経学

短報

抗グルタミン酸受容体抗体陽性を示した可逆性脳梁膨大部病変を有する脳症の1例

藤木 陽平1), 中嶋 秀人1)*, 伊藤 巧1), 北岡 治子1), 高橋 幸利2)

Corresponding author: 清恵会病院内科〔〒590―0024 堺市堺区向陵中町4丁2―10〕
1)清恵会病院内科
2)国立静岡てんかん・神経医療センター

症例は18歳男性である.発熱と関節痛の1週間後に強直性痙攣と意識障害が出現した.頭部MRI拡散強調画像にて脳梁膨大部に卵円形の高信号病変をみとめたが,入院3日目のMRIでは脳梁膨大部の異常信号は消失した.髄液所見に異常なく,各種ウイルスと細菌検査も陰性であったが,髄液中のグルタミン酸受容体に対するIgGGluRε2抗体が陽性であった.アシクロビルとステロイド,抗てんかん薬の投与で意識状態は改善し,強直性痙攣の頻度も軽減して3カ月後に完全回復した.本例では病原体は不明だが可逆性脳梁膨大部病変を有する脳症(MERS)と考えられ,IgG-GluRε2抗体が本例の病態に関与した可能性も推測された.
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(臨床神経, 51:510−513, 2011)
key words:MERS,脳梁膨大部病変,抗グルタミン酸受容体抗体,MRI,痙攣発作

(受付日:2011年2月18日)