臨床神経学

短報

右頭頂・側頭葉病変後に使用行動・模倣行動を呈した1例

溝渕 敬子1)*, 高橋 伸佳2), 安島 明子3)

Corresponding author: 旭神経内科リハビリテーション病院神経内科〔〒270―0022 松戸市栗ヶ沢789―10〕
1)旭神経内科リハビリテーション病院神経内科
2)千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科
3)旭神経内科リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科

右頭頂・側頭葉病変後に,使用行動と模倣行動を呈した1例を報告した.右手優位に両手に本能性把握反応,使用行動,模倣行動がみられ,その他に注意障害,左半側空間無視,構成障害をみとめた.頭部MRIでは右頭頂・側頭葉の皮質・白質に病巣がみられ,MRAでは右内頸動脈閉塞所見がみとめられた.本例の使用行動・模倣行動は,行為遂行系の中枢である左頭頂葉が,以下の2つの行為抑制機構から同時に解放されることによって発現したものと考えられた.すなわち右内頸動脈閉塞により機能障害が推定される右前頭葉からの抑制機構と,右頭頂葉病変による同部から対側(左)頭頂葉への抑制機構である.
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(臨床神経, 51:350−353, 2011)
key words:使用行動,模倣行動,脳梗塞,内頸動脈閉塞

(受付日:2010年6月30日)