臨床神経学

短報

難治性しゃっくり(吃逆)を生じた延髄背側の播種性転移性脳腫瘍

有島 英孝, 菊田 健一郎

Corresponding author: 福井大学脳脊髄神経外科〔〒910―1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23―3〕
福井大学医学部脳脊髄神経外科

症例は73歳男性である.肺癌の左側頭葉への脳転移に対して合計4回の開頭腫瘍摘出術と3回の放射線治療が施行された.脳転移の発症から8年後,突然頻回にしゃっくり(以下,吃逆)を生じるようになり,吃逆は30分以内に自然消失する時もあったが,2〜3時間継続し食事摂取が困難な時もあった.頭部造影MRIでは延髄背側に直径5mmの造影効果のある小さな腫瘤をみとめ,過去の経過から肺癌の転移性脳腫瘍の髄液播種と考えられた.また延髄背側に責任病変が存在する難治性吃逆の報告が散見されることから,吃逆の責任病巣も延髄背側の小さな播種性転移性脳腫瘍と考えられた.難治性吃逆を呈するばあい,MRIで延髄を精査する必要がある.
Full Text of this Article in Japanese PDF (300K)

(臨床神経, 51:279−281, 2011)
key words:しゃっくり(吃逆),播種性転移性脳腫瘍,MRI,延髄背側

(受付日:2010年11月11日)