臨床神経学

症例報告

ステント留置術が有効であった左総頸動脈起始部狭窄による眼虚血症候群の1例

矢澤 由加子1)*, 佐藤 祥一郎1), 板橋 亮1), 古井 英介1), 近藤 竜史2), 松本 康史2), 藤原 悟3)

Corresponding author: 広南病院脳血管内科〔〒982―8523 宮城県仙台市太白区長町南4―20―1〕
1)広南病院脳血管内科
2)同 血管内脳神経外科
3)同 脳神経外科

症例は76歳女性である.左眼の一過性黒内障で発症し,眼科的診察で左眼の視力低下および血管新生緑内障,虹彩ルベオーシスをみとめた.頸動脈エコー検査から左総頸動脈近位部に高度狭窄の存在が推定され,眼動脈エコー上左眼動脈の血流速度は低下していた.脳血管撮影では左総頸動脈起始部の高度狭窄が確認され,左眼動脈の描出は不良であった.左総頸動脈起始部狭窄による眼虚血症候群と診断した.眼動脈血流改善により眼虚血症候群の増悪を防ぐため,左総頸動脈起始部にステントを留置した.術後,黒内障発作は消失,虹彩ルベオーシスは消退し,視力低下の進行はなかった.本例では総頸動脈狭窄部位の推定や血行動態の評価に超音波検査が有用であった.
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(臨床神経, 51:114−119, 2011)
key words:頸動脈狭窄症,眼虚血症候群,ステント,頸動脈エコー検査,眼動脈エコー検査

(受付日:2010年6月15日)