臨床神経学

症例報告

初期には脊髄小脳変性症と診断され,オリーブ・橋・小脳病変が高度であった進行性核上性麻痺の1剖検例

岩崎 靖1)*, 森 恵子1), 伊藤 益美1), 三室 マヤ2), 吉田 眞理2)

Corresponding author: 小山田記念温泉病院神経内科〔〒512―1111 三重県四日市市山田町5538―1〕
1)小山田記念温泉病院神経内科
2)愛知医科大学加齢医科学研究所神経病理部門

症例は死亡時72歳の女性である.63歳時に歩行障害と構音障害で発症し,画像所見上は小脳・脳幹萎縮がめだち,初期には脊髄小脳変性症と診断された.眼球運動障害,体幹に強い筋強剛,把握反射,頭部MRIでの中脳被蓋萎縮所見が経過とともに出現し,発症6年後に進行性核上性麻痺と診断を変更した.病理学的には前頭葉萎縮,脳幹被蓋萎縮に加え,オリーブ・橋・小脳系の変性が高度で,神経原線維変化とGallyas陽性/タウ陽性のグリア細胞内構造物,argyrophilic threadを広範かつ多量にみとめた.小脳・脳幹病変が強く,脊髄小脳変性症に類似した臨床症候を呈する進行性核上性麻痺のサブタイプに属する症例と考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (981K)

(臨床神経, 51:756−760, 2011)
key words:進行性核上性麻痺,失調,脊髄小脳変性症,神経原線維変化,オリーブ・橋・小脳障害

(受付日:2011年3月15日)