臨床神経学

短報

真珠腫性中耳炎の手術を契機に再発した特発性肥厚性硬膜炎の1例

小早川 優子1)2)*, 田中 弘二1), 松本 省二1), 田中 公裕1), 川尻 真和1), 山田 猛1)

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕1)済生会福岡総合病院神経内科2)九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は70歳女性である.4年前に慢性の頭痛があり,特発性肥厚性硬膜炎の診断で副腎皮質ステロイド剤治療にて軽快した.3年前に左耳痛,耳漏,難聴が出現し,1年前に真珠腫性中耳炎と診断され,3カ月前に左乳突削開術,鼓室形成術を受けた.術後耳症状は改善したが左側頭部痛を自覚し,術後3カ月の頭部MRIにて左前頭部を中心に肥厚性硬膜炎の再発をみとめた.副腎皮質ステロイド剤治療のみで改善したことから感染性の機序は否定的で,中耳炎にともなう慢性炎症や手術侵襲による炎症が再発に関与したと考えられた,特発性肥厚性硬膜炎は,耳科的炎症性疾患の合併または手術侵襲にともなって再発することがあり,注意深い経過観察が必要である.
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(臨床神経, 50:489−492, 2010)
key words:特発性肥厚性硬膜炎, 再発, 真珠腫性中耳炎, 慢性炎症, 手術侵襲

(受付日:2010年2月8日)